埋没法の抜糸

 埋没法は、まぶたの内部構造を本当の二重に変えていませんので、埋没した糸を取り除けば元に戻すことができます。これが埋没法の特徴でもあります。一旦は、二重を希望し手術を受けたが、実際に二重にしてみると自分には似合わないと感じ、元に戻したいと考えられる方もいらっしゃいます。抜糸する手術は、皮膚を1〜2mm切開し、まぶたの中に埋没した糸の結び目を見つけ出し、結び目近くで糸を切断し、結び目ごと糸を摘出するのです。手術後2〜3か月以内でしたらほぼ確実に元に戻りますが、手術後長く経過した場合や糸の周りの炎症による癒着が進んでいますと、抜糸をしても薄くクセがついてしまい、完全には元に戻らないこともあります。また、まぶたの中の奥深くに結び目がある場合、糸が発見できず抜糸ができない場合もあります。 

埋没法の欠点は、元に戻りやすいことと、埋没糸という異物を埋め込むことによる副作用があることの2点に集約されます。これまでは、元に戻りにくい二重瞼にするために、埋没糸の掛け方をどうすればよいのかが追求されてきました。しかし、埋没糸は異物であるという側面が軽んじられてきたきらいがありました。埋没法の効果が追及される一方で、その副作用が軽視されてきたのです。埋没法の抜糸について検討がなされなかったので、情報提供が乏しく、埋没法を受け実際に副作用が出た患者さんはどうすれば良いか分からず、悩みは深刻でした。
埋没法は糸で留めるだけの簡単な手術と雑誌などに宣伝されています。このように宣伝されると、埋没法は体にやさしい方法と錯覚してしまいます。しかし、言い方を換えると、埋没法は糸という異物を埋め込む方法であり、まぶたの健康には良くない手術とも言えます。したがって、異物である埋没糸を抜糸することも常に念頭におかなければなりません。
抜糸を受ける理由として、二重ラインのデザインが気に入らなかった、二重ラインが浅くなったり消失してきた、糸が青く透見されたりシコリができた、牽引感や重圧感あるいは違和感がある、埋没糸によるアレルギーが出た、眼のゴロゴロ感、目やに、眼の痛み、充血といった角膜刺激症状などです。
糸の周りにシコリ
糸の周りにシコリができ、プックリと盛り上がって見える

埋没法に使う糸の劣化変性も問題になります。
雑誌宣伝では、糸は医療用で溶けることのない永久糸であるから安全性に問題はないとされます。しかし、埋没法の糸として用いられることの多いナイロン糸は経年変化で劣化変性し、10年も経過するとボロボロになってしまうのです。埋没糸が劣化断裂すると全部が抜糸できず、一部の糸が残存することにもなります。また埋没糸の周囲にシコリや瘻管(ろうかん)が認められることもあります。
抜糸の方法には皮膚側アプローチと結膜側アプローチとがあります。皮膚側アプローチには皮膚を切る長さにより穿刺(せんし)切開法、小切開法、全切開法があります。ほとんど埋没法では、皮膚側に埋没糸の結び目があるので、基本的な抜糸方法としては皮膚側アプローチでしかも傷跡の短い穿刺(せんし)切開法を行っています。
穿刺(せんし)切開法では、埋没糸の存在が予測される皮膚に1〜2mmの刺し傷(穿刺切開)を加え、糸を探し出し抜糸をします。経験上、この穿刺切開法で半径6mmほどの範囲にある埋没糸は十分に抜糸可能です。この時の傷跡は残るものの、ほとんどわからないぐらいキレイに治ります。
穿刺(せんし)切開法での抜糸
穿刺(せんし)切開法での抜糸

一ヵ所の穿刺切開法で埋没糸が発見できない場合は、傷口を大きくするよりも別の部位に刺し傷(穿刺切開)を加えた方が傷跡が長くならず傷がキレイになります。たとえ多数の刺し傷ができても治り方はキレイなのです。
多数の穿刺(せんし)切開法での抜糸 多数の穿刺(せんし)切開法での抜糸

小切開法は、穿刺切開法で抜糸できない時や埋没切開法の二重瞼手術を予定した場合に利用します。二重ラインの中央に4〜5mmの長さの切開をし、穿刺切開法と同様の抜糸操作をします。大多数の糸が抜糸可能です。
小切開法での抜糸 小切開法での抜糸

全切開法は、小切開法でも抜糸できなかった場合や全切開法の二重瞼手術を予定した場合に利用します。全切開法が最も視野がよく抜糸を確実に行うのに適した方法ですが、この方法をもってしても糸が発見できないことがあり注意を要します。
全切開法での抜糸、写真中央にくい込んだ糸が見えます 全切開法での抜糸、写真中央にくい込んだ糸が見えます

結膜側アプローチは、陳旧例でまぶたの裏側の結膜側に糸が露出している場合に、まぶたの裏側から糸をつまみ出す方法です。なお糸を引っ張っても抵抗があり容易に抜けない時は糸の結び目が解けていないと考え、皮膚側から穿刺切開法を追加して抜糸をします。
まぶたの裏側の結膜側からの抜糸 まぶたの裏側の結膜側からの抜糸

埋没法の糸の存在部位は、皮膚皮下、筋肉内、瞼板前の3つに分類できます。埋没法の瞼板固定法では、糸の結び目が瞼板前の深い所にあることが多く、糸の発見が難しく抜糸は困難を伴います。一方、糸の結び目が皮膚皮下にある場合は、結び目が青く透見されます。これは容易に穿刺切開法で抜糸できます。糸が筋層にある場合、皮膚面での変化が乏しく問題となることがありません。また抜糸をする場合も比較的容易にできます。埋没糸の存在部位は筋層が適切であると思われます。
元に戻らない埋没法はありません。「当院の埋没法は、元に戻らない、永久保障します」との宣伝をうのみにすると危険です。そのクリニックでは複雑な糸の掛け方をしているのです。埋没糸の本数を増やしたり複雑な糸の掛け方をするほど、異物としての副作用が増すとともに抜糸が難しくなってきます。まぶたの裏側の炎症は抜糸をすることで治まりますが、まぶたの裏側の瘢痕(傷あと)は消失することはなく永続しますので、その旨をよく理解する必要があります。雑誌宣伝では抜糸をすれば元に戻るから安心とありますが、これは間違いです。ひとたび埋没法を受けると、たとえ抜糸しても皮膚の陥凹、癒着、浅い二重ラインが残り、完全には元のまぶたに回復することがないことも理解する必要があります。抜糸手術では、埋没糸が発見できるまで1時間ないし2時間もかかることがありますが、深刻な悩みを解消したいという患者さんの期待を裏切ることなく粘り強く慎重に、まぶたへの負担を最小にすべく努力しなければならないと思います。「埋没糸は異物」ですから、抜糸がしやすいように、しかも一生涯異物による副作用が起こらないような埋没糸の掛け方を行うことが大切であると考えています。

参考文献:埋没法の抜糸 参考文献:埋没法の抜糸.
日本美容外科学会雑誌2006;43:88-95.


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